人間の脳は、「もうゴール」だとか「もう勝った」という結論に達すると、思考が完結されてしまうと日本大学の林成之教授はいう。
脳には「報酬系神経群」という、ダイナミック・センターコア(考えや気持ち、意欲など才能を発揮するための仕組みを作る機関)に情報を伝える神経群がある。
人が「もうゴールだ」だとか「もう勝った」と考えると、報酬神経群は「もう終わった」と判断してしまうため、脳内の情報を脳細胞に伝える機能が低下する。
その結果、考える機能が低下し、運動能力は一瞬で低くなってしまうのである。
アテネオリンピックの陸上男子100メートルに出場したジャマイカのパウエル選手。
決勝で、彼は75メートル地点までトップを走っていた。
しかし、ゴール直前でまさかの失速。
試合後、パウエル選手は、
「自分は75メートル地点で勝ったと思った」
とコメントしている。
彼は、75メートル地点で自分の頭の中で「勝てた」と考えてしまった。
すると、脳は、「もう終わった」と認識する。
そのために、運動神経を動かしていた脳が機能しなくなり、筋肉のパフォーマンスが落ちてしまったのである。
人間は往々にして、作業の途中で「大体できた」という達成感を得る傾向がある。
「できた」と思った瞬間に考える仕組みが止まってしまう。
そのため、目的を達成することが難しくなる。
ゴールに近づいた地点に来ても、「もう終わりだ」と思うのではなく、
「最後まで一気に加速する」
「ラストスパートしてやり抜こう」
と考えることが大切である。
そうすれば、上り調子になっている能力がさらに高まり、最大限の力を発揮できるようになる。