企業には、次の3つの時間の区分がある。
1.組織の時間
2.個人の時間
3.集団の時間
組織の時間は、会社の公式な時間である。
朝礼、公式会議、定例ミーティング、教育研修など。
個人の時間は、基本として自分ひとりで仕事をする時間である。
文書・資料作成、顧客との連絡、一人で考える時間など。
集団の時間は、組織の時間と個人の時間の中間に位置する。
いわゆる、ワイワイガヤガヤと周りの人と話し合う「ワイガヤ」である。
集団の時間は、あるとき突然始まる。
話されるテーマも雑多で、
仕事の話もあれば、会社組織や個人の話、社内の噂話になることもある。
この集団の時間は、善なのだろうか、悪なのだろうか。
日本企業では、これまで一般的に、
天才のアイデアによって革新的なビジネスを生み出したり、
事業戦略を緻密に作成して決められた役割を遂行するよりも、
誰かの思いつきや仮説をみんなで発展させていく改良型を重視してきた。
それに適した時間は、集団の時間である。
環境の変化に迅速に対応を迫られる昨今、
ますます集団の時間が重要になってきている。
最近は、多くの企業がワークライフバランスを重視し、
残業時間の削減に力を入れ始めている。
一番手っ取り早いのは、集団の時間を削減することである。
でもそれは、これまで集団の時間に依存してきた関係各所との連携や
イノベーション活動に悪影響を与えることになるのも確実である。
集団の時間を無くす一方で競争力も向上させたいと考えるなら、
外国企業のように、組織の時間を今よりも格段に充実させて、
本音の議論をしてしっかりとモノを決めるようにすると共に、
集団に頼らずに個人の時間をマネジメントできる自立した個人が必要となる。
それは、現在の多くの日本企業の組織運営システムとは異なるものである。
残業時間の削減だけを目的に集団の時間の撲滅に着手すれば、
一時的に残業代が減り、生産性が上がったように見える。
しかし、それはすぐに企業の競争力の低下を招くことになってしまうはずだ。