同じ言葉を伝えても響く人と響かない人がいる。
できるリーダーは、メンバーのタイプを見て接し方を変えている。
例えば、
「大丈夫だ」「頑張れよ」と言われたときに、
勇気づけられた、と捉えるメンバーと
逆にプレッシャーを感じてしまうメンバーの両方が存在する。
「やればできるじゃないか」という言葉は、
聞きようによっては、
「普段はできていないが、今回やっとできた」できる
という意味にもとらえられかねない。
リーダーは、
メンバーの正確や行動に合わせたアプローチを心掛ける必要がある。
同じ言い方でも、相手によってとらえ方が変わってしまう。
米国の行動心理学者ウィリアム・M・マーストン博士は、
人の行動パターンを4つに分類した「DiSC理論」を提唱した。
D:主導型(Dominance)タイプ
i:感化型(influence)タイプ
S:安定型(Steadiness)タイプ
C:慎重型(Conscientiousness)タイプ
4つのタイプの特徴とタイプ別のアプローチは次のとおり。
D:主導型(Dominance)タイプ
◇特徴
悩んだり考えたりするよりも、まず行動を起こして早く成果を出そうとする。
チャレンジ精神があり、意思が強く困難にも負けない。
人からコントロールされることを嫌い、自分で仕切ろうとする。
自分なりのやり方で結果を出そうとし、細かく指示されることを嫌う。
言いたいことをはっきり言い、全体のチームワークにはあまり関心がない。
◇このタイプへのアプローチ
チャレンジしたいと思える少し高めの目標を設定する。
権限の範囲を事前に示し、細かい口出しをせずに信じて任せる。
メンバーから相談や助言を求められれば、親身になって対応する。
◇やる気にさせる一言
「君に任せたよ、自由にやって」
「この仕事は君しかできない」
「やっぱり君に任せてよかった」
i:感化型(influence)タイプ
◇特徴
明るく社交的な性格で、ムードメーカー的な存在である。
自分から積極的に人と関わろうとする。
感情表現が豊かで、物事を肯定的に捉えて周囲を明るくする。
楽観的であり、難しいことでも安易に引き受けて後悔はしない。
緻密さが足りず、仕事の成果や人に対して厳しさに欠ける傾向がある。
◇このタイプへのアプローチ
小さいことでも気づいたことをほめてあげると、やる気アップにつながる。
積極的に話し掛けて、コンタクトする回数を増やす。
存在や働きを無視したり、綿密な業務や単調な業務を与えるとやる気を失う。
◇やる気にさせる一言
「もうできたのか、助かるよ」
「君の仕事ぶりを部長もほめていたよ」
「最近がんばっているね」
S:安定型(Steadiness)タイプ
◇特徴
安定した環境の中で着実に成果をつくっていこうとする。
慣れ親しんだやり方で成果をあげようとし、変化を嫌う傾向がある。
コツコツと最後までがんばってやり遂げる粘り強さがある。
言われたことを言われた通りに忠実にこなす。
チームワークを大切にして、協調性があり協力的。
◇このタイプへのアプローチ
一気にチャレンジさせるのではなく、段階を踏んで一つひとつ確実に取り組ませる。
任せるよりも具体的なやり方や手順に基づいた指示をする。
着実に成果が発揮できるような安定した仕事環境を提供する。
◇やる気にさせる一言
「困ったことがあったら、何でも相談して」
「まず、ここまでやってみよう」
「ありがとう、皆が助かっているよ」
C:慎重型(Conscientiousness)タイプ
◇特徴
細部に注意を払い、小さなミスや間違いも許さない。
データを重視し、自分が納得するまで正確さや合理性を求める。
長所、短所をじっくり検討した上で、慎重に結論を出す。
自分が考えたやり方への批判に防御的になりがち。
衝突したら、妥協しながら人を介したりすることで衝突を回避しようとする。
◇このタイプへのアプローチ
指示を出すときには、目的や仕事の全体像を指し示して納得させる。
メンバーが疑問を残さず納得して仕事ができるようサポートする。
予想されるリスクに対しては、許容範囲を示して安心させる。
◇やる気にさせる一言
「君の考えは、もっともだと思う」
「君の言う方向でもう少し考えてみたら」
「いつも完璧にできているね」
メンバーがどのタイプかを観察することで、
どのようなアプローチをすれば良いかのヒントを得ることができる。
ただし、
どのタイプが優れていて、どのタイプが劣っているということではない。
また、「彼はこういう性格だからこのように関われるべきだ」
と決めつけてしまってもいけない。
逆にコミュニケーションを阻害してしまうことになりかねない。
あくまで、相手をよく観察して、相手の状況を効率的に分析する手段で
あることを知った上で、活用する必要がある。
メンバーに対しては、
仕事の意義、自分の存在価値、仕事の実感を持たせることに加えて、
よく観察して、気遣いを怠らないことが大切。
これがやる気をアップさせるコミュニケーションの秘訣である。