いくら考えても問題解決につながらず、思考停止になってしまったことはないだろうか。
そんなとき、目の前の課題からいったん視線を外して視点を変えてみると、
思わぬところからアイデアを得られることがある。
例えば、猫が舌にある小さな突起を使って毛づくろいをして、
まとめて毛を吐き出す仕組みにヒントを得て、
掃除機のゴミをコンパクトに圧縮する方法に応用した例がある。
自然界からヒントを得たり、
他業種では当たり前でも自分の業種ではそうでないことを取り入れて、
成功した事例はたくさんある。
さまざまな角度から問題をとらえ直すことで、解決へのアイデアを生み出すフレームワークが「SCAMPER法」。
米国の創造性開発の研究家ボブ・エマールが、オズボーンのチェックリストを使いやすく改良し、7つの切り口で考えるリストとしてまとめたもの。
S(Substitute):代える
C(Combine):結びつける
A(Adapt):応用する
M(Modify):修正する
P(Put to other uses):転用する
E(Eliminate):取り除く
R(Reverse/Rearrange):逆にする/並べ替える
具体的な製品やサービスなどに対して、キーワードを使って検討の視点や着眼点をずらしていくことで、アイデア発想をうながす。
1.改善したいこと(製品、サービスなど)を決める
2.7つの切り口に基づいて、質問の例を考える
3.作成した質問リストを順に見ていき、アイデアを出す。
4.それぞれのアイデアが実現すればどのようなメリットがあるか、
実現するためにはどれだけの時間・コストがかかるのかを考える。
5.7つの切り口から得られたアイデアを具体的に適用する。
では、SCAMPER法にしたがって、これまでにない「新しいマグカップ」のアイデア考えてみよう。
S(Substitute):代える
<質問例>
他のものに置き換えてみたらどうか?
何かの代わりに使うことができるか?
他の材料で作ってみたらどうか?
<アイデア例>
食べられる材料で作ってみたら…
伸縮自在の材料で作ってみたら…
C(Combine):結びつける
<質問例>
何かを組み合わせることができるか?
目的を組み合せることができるか?
用途を組み合せることができるか?
<アイデア例>
複数の飲み物を同時に飲めたら…
飲み物に合わせた適温でいつでも飲めたら…
A(Adapt):応用する
<質問例>
他に似ているものはないか?
他にどのような使い方ができるか?
過去に似たようなアイデアはあったか?
<アイデア例>
観葉植物を植えてインテリアにしている…
アロマを入れて芳香浴をする…
キャンドルを立てる…
M(Modify):修正する
<質問例>
大きさ、重さ、サイズを変えてみてはどうか?
デザインや色を変えてみてはどうだろうか?
何かを付け加えたり、減らすことができるか?
<アイデア例>
とても重いマグカップ…
折りたためるマグカップ…
P(Put to other uses):転用する
<質問例>
そのままで他の使い道があるか?
一部を変えた場合、新しい使い道は何か?
他にどのような用途で使用できるか?
<アイデア例>
ゲームに使う…
調理器具として使う…
E(Eliminate):取り除く
<質問例>
何かを取り除くことはできるか?
何があれば少なくとも機能するか?
何か犠牲にできることはあるか?
<アイデア例>
取っ手を無くしたら…
飲む機能を無くしてみる…
R(Reverse/Rearrange):逆にする/並べ替える
<質問例>
順番を変えたらどうか?
逆、裏返しにしたらどうなるか?
交換したらどうか?
<アイデア例>
カップの底を主に使えないか…
SCAMPER法は、ひとりでも使えるが、何人かで集まって話し合えば、より多くのアイデアを生み出すことができる。
グループで実施する場合には、ポイントが3つ。
1.質より量
アイデアを出すときは、良いアイデアを出そうと思わずに、
とにかくたくさんアイデアを出す。
2.スピード重視
短時間で7つの切り口の質問に答えることが、
強制的にアイデアを生み出す原動力となる。
3.否定しない
アイデアを発表するときには、
周囲から否定する言葉を発言しないようにする。
世紀の大発明、大発見も、最初の起点は個人のひらめきや思いつきである。
それが周囲から共感を得て育っていくことによって、次第に客観化され標準化されていく。
アイデア発想力は、決して生まれつきのものではない。訓練次第で伸ばすことのできるスキルである。
SCAMPER法を使えば、誰でも短時間で今までの倍以上のアイデアが出せるようになる。