2015年9月のラグビーワールドカップでは、日本代表が南アフリカに勝利し、
世界をあっと驚かせた。
24年間勝てなかった日本代表が優勝候補を破った主な要因の一つは、
「世界一のデータ分析」である。
日本代表のアナリストとして分析を担当したのは、中島正太氏である。
2012年4月、エディー・ジョーンズ氏をヘッドコーチとする「エディージャパン」が誕生。
エディーが掲げた目標は、世界ランキングを10位以内に引き上げる目標だ。
エディーHCは、ワールドカップまでに世界ランキイングを10位以内に引き上げ、
さらに本番でベスト8にはいる目標を定めた。
これを実現するために、日本独自のラグビースタイル「ジャパンウェイ」を掲げた。
スタッフに対しては「世界で最も準備されたチーム」を目指すこと指示した。
日本代表チームの組織は、エディーHCとアシスタントコーチ4人の体制。
各コーチは試合に向けて対戦相手を分析し、対策を考え、
トレーニングメニューやミーティングのプランを作る。
アナリストである中島氏は、コーチ陣が分析・対策を考える前段階の準備をする。
このように、3年前から、初戦の南アフリカ戦に向けた準備が始まった。
本番8カ月前になると、各コーチがそれぞれ、考えた分析・対策を絞り込んだ。
最終的にはアナリストとコーチ全員で、チームとしてのゲームプランを考案した。
準備の段階では、南アフリカ代表のすべての試合映像とキープレーヤーの映像、
世界でラインアウトやキックオフが優れたチームの映像を集めた。
分析の結果、南アフリカ代表は、ラインアウトが非常に強力で、
全トライの50%以上が、ラインアウトを起点としていることがわかった。
日本代表としては、
南アフリカ代表にいかにラインアウトの強みを出させないようにするか、
が重要な戦術となった。
データを見ながら、南アフリカ代表のラインアウトの戦術を分析した。
その上で、
日本代表は何人でラインアウトを構成するのか、
どのエリアでラインアウトを多く獲得できるといいのか、
などの具体的な戦術を考案していった。
世紀の番狂わせ、奇跡などと言われている日本ラグビーの大金星は、
実は、周到に準備された情報戦での勝利という意味合いも大きい。
ラグビーやサッカーのような複雑なゲームは、
これまで専門家の勘コツでしか分析できなかった。
でも今は、あらゆるデータを詳細に精度よく分析できるツールがある。
日本代表が実行したステップは、私たちがビジネスで競合に勝とうとする時にも、
そのまま使えるシナリオである。
ビジネスにおいても、このような競合に対するデータ・アナリスト的なアプローチは、
必須になるはずだ。