「影響力の武器」の著者、アメリカ社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ氏は、
「人を説得し、その人から望む行動を導き出す」ためには、
6つのアプローチがあると説いている。
1.返報性
人から恩を受けたとき、人は恩義を感じ、それを返したいという気持ちを持つ。
スーパーで食品を試食して、
美味しいということよりも、タダでもらったことが理由で購入した。
募金運動のとき、先に一輪の花を渡されたので、寄付することにした。
などである。
2.希少性
人は、限られたものほど欲しくなる。
希少性は、商品の特長ではなく、売り方によって演出できる。
商品の希少性を高めるためには、
個数限定、
シーズン限定、
地域限定、
ECサイトの時間限定、
会員登録した人にのみ与えられる特典、など、
行動しなかったときに失うものを想像させて、希少性を感じさせるのである。
3.権威
肩書きや経験などの「権威」を持つ者に対して、人は信頼を置く。
ある郊外の不動産物件のうち、
専門家の推奨付き物件は、営業マンの推奨のみで紹介された物件に比べて、
見学の予約率が20%増、成約率は15%増を実現したという。
ポイントは、ターゲットにとって信頼できる「権威」は誰かを把握することだ。
4.コミットメントと一貫性
人は誰でも、「表明した約束を守ろうとする」気持ちを持っている。
ボランティアについてのアンケートで、「今後やりたいと思う」と答えた人ほど、
実際にボランティアを依頼されたとき、参加する傾向が高いという調査結果がある。
一旦、ボランティアに対する意欲を示してしまったからには、
実際に参加することを求められたときに協力せざるを得ない、
と感じるようになる。
最初にコミットさせる内容は、コミットしやすい小さなアクションである方が、
結果につながりやすい。
5.好意
好きな人に同意したくなる気持ちも人の心を大きく動かす。
仲の良い友人のおすすめ商品を購入する。
お気に入りの店員からたくさんの商品を買ってしまう。
ターゲットに、「好意」を抱かせるようなアプローチも有効である。
人が好意を抱く理由は3つある。
「自分に似ている」
「自分を褒めてくれる」
「同じゴールを目指す仲間である」
これら3つのポイントは、好意を抱かせるアプローチの重要な要素である。
6.社会的証明
周囲の動きに同調したくなる気持ちも人の行動を大きく左右する要素だ。
街頭で多くの人が空を見上げていたら、
その場に遭遇したほとんどの人は同じように空を見上げる。
みんながやっているからには、何か理由や価値があるに違いない、
という心理が働く。
そして他者の行為を自分の行為に反映させる傾向があるのである。
「売上ナンバー1」を謳う、
ユーザーの体験談を紹介する、
などがその一例だ。
「どのような企業をクライアントに持っているか」を公表する。
そうすれば、多くの企業と取引しているということをアピールし、
信頼性やサービスの安定感を創出することができる。
多くの人から支持されていることを強調することは、
社会的に信頼できるという安心感を生みだすのだ。
マーケティングにおいても、この6つのアプローチは大いに有効である。
個人を対象とするB to Cの分野だけでなく、
企業や組織を対象とするB to Bの分野でも、幅広く活用できそうだ。