人は、目の前の対象が「好き」か「嫌い」かをその場の感情で判断しているわけではない。
脳が過去の記憶に基づいて「快」「不快」を決定しているのである。
脳の「海馬」は、これまでに得た膨大な情報を、
長期記憶として蓄積するかどうか判断する役割を果たす。
このとき、判断に影響を与えるのは「扁桃核」であり、
その情報が扁桃核を刺激するものであれば、
海馬は重要なデータと判断し長期記憶の倉庫に送るのである。
そして新たに情報が入ってくると、
脳の「前頭前野」にあるワーキングメモリーと呼ばれる機能が働き、
保存された記憶と照らし合わせて「快」「不快」を決定するのである。
脳の働きを理解すれば、
他人が自分に抱く感情をコントロールすることができる。
脳が「快」「不快」を判断する材料は、視覚、聴覚などの五感である。
外見や話し方を変えることで、自分の印象も変えることができる。
すなわち、表情や服装、声のトーンなどで自分を演出することができる。
例えば、
ピンクや赤のネクタイ、太いストライプのスーツなどはインパクトが大きい。
プレゼンなど、他の人と差をつけて目立ちたい場面では効果的である。
ブルーのネクタイや落ち着いた無地のスーツを嫌う人はあまりいない。
相手に警戒感を与えたくない場面では無難である。
年齢を重ねると身の回りのことに無頓着になり、
ネクタイやスーツの色なんて何でもいいと考える人が出てくる。
それは思考力や創造性を担う脳の「前頭前野」の機能が低下するから。
また前頭前野の機能が低下すると怒りっぽくなるといわれる。
論理的思考力が落ちて理性的な判断ができないので、
感情がコントロールできなくなるのである。
そのため、前頭前野にあるワーキングメモリーがフル稼働する環境を
意識的に作る必要がある。
その方法の1つは「年齢の離れた友人を作る」ことである。
会社の同僚や学生時代の友人との交流では得られない新しい価値観をもたらし、
好奇心を刺激してくれる相手との交流により、脳の機能が鍛えられる。
感情的になりやすくなったなと感じたら、
脳の働きを理解して、脳に良い行動を心がけたい。