戦前から現在まで、
国際交渉の舞台で交渉術を駆使して成果を上げた事例は少ない。
交渉とは、問題当事者間で互いの目的を実現させるために、
妥協点を見いだすために、説得の応酬を繰り返す過程のことである。
国家間交渉、企業間交渉、個人間交渉などケースによって異なるが、
交渉妥協点がどちら側に有利だったかによって勝敗が決まる。
ビジネスの現場においても、説得・交渉を優位に進めることが非常に重要である。
社会心理学では、説得コミュニケーションスキルが以下のように分類されている。
1.フット・イン・ザ・ドア・テクニック
小さな要請から始めて、次に大きな要請をする段階説得法である。
人は、一度小さな要請に応じれば、次のより大きな要請に対しても応じやすくなる、
という心理傾向に基づく。
2.ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
最初の要求が応じかねるほど大きなときは、人はその要請を断わるが、
その後に小さな要請があれば応じやすくなる、という心理傾向に基づく。
人は譲歩した相手に対しては、自分も譲歩する傾向がある。
3.ザッツ・ノット・オール・テクニック
ドア・イン・ザ・フェイスの変形。
異なる点は、相手の拒否の返事を待たずに要請水準を下げていく、
または相手にプラスになるものを付け加えていくという点である。
テレビショッピングで、
「今日はさらにこれとこれをおつけして同じお値段でご提供します」
という宣伝文句がこれに当たる。
4.ロー・ボール・テクニック
相手が取りやすいボールを投げて、まず取らせてしまう。
先に決定させてしまい、後で良い条件を取り除いたり、
逆に悪い条件を付加するという方法。
人は一度ある決定をしてしまうと、後でその内容が変わっても
なかなか決定を変えようとしない、という心理傾向を利用する。
5.フォー・ウォールズ・テクニック
最初から「イエス」「イエス」と答えさせておいて、
最後にも「イエス」と答えさせる方法。
6.ブーメラン・テクニック
相手の考えと同じ考えをわざと強調して、ブーメラン反応を誘う。
すなわち、当初の意見とは逆の意見が頭に浮かんでくることを誘い、
相手を逆方向に意見変容させる技法。
米国のように「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」を
国際交渉の舞台で駆使する国家と、
日本のようにそうした技法を使えない国家との交渉では、
勝敗はおのずと明らかである。
説得・交渉テクニックは、さまざまな場面で非常に有効である。
説得交渉術を学習して訓練すれば、ビジネスの現場においても、
強気の相手に対しても、効果的に優位に立つことができる。