人が一度に記憶できる数には制限がある。
米国ハーバード大学のジョージ・ミラー博士は、
「人間が一度に記憶できる数は7つかプラスマイナス2である」
という概念を提唱した。
これは「マジカルナンバー7」と呼ばれている法則である。
本来、7という数字は人間にとって、深いかかわりのある数字。
1週間は7日、音階は7つ…
春の七草、秋の七草、七福神、七つ道具、七不思議…
7人で構成するグループも多い。
ミラー博士は、実験、研究を通じて、
「人は数字や単語リストを与えられると、7つ以上の項目は正確に想起できない」
ということを発見した。
この研究のポイントは、記憶の限界要因が「項目数」であるということ。
項目に含まれている情報に限界があるのではない、
ということである。
もし私たちが7つの情報しか覚えられないとすれば、
「12172694876」
という10桁の数字を覚えることは不可能になってしまう。
でも、この一連の数字を覚えるように言われれば、
「121-7269-4876」
のように、短く切って覚えようとするはずである。
私たちは、自然にまとまりに分けて覚えようとしているのである。
各項目に、より多くの情報が含まれていれば、記憶できる情報が増える。
より多くの情報とは、項目=まとまりの数を増やすのではなく、
それぞれのまとまりを大きくするということである。
このまとまりは、「チャンク(Chunk)」と呼ばれる。
チャンクとは英語では「かたまり」を意味し、
長い数字や文字でもチャンク化すれば、記憶できる容量が増えるのである。
例えば、
アルファベットをAからZまで覚えようとするとき、
間断なく一気に言うのではなく、まとまりごとに言っていることに気付くはず。
アルファベットの歌も同じ。
さらに、3桁の数字や3文字の単語を7つ記憶できれば、
記憶された数字や文字の数は21個となり、記憶容量は3倍に増えたことになる。
数字を重ねた数式や単語を連ねた文を覚えるようにすれば、
1つの数式や文が1つのチャンクとなり、7つの数式や文を記憶できる。
さらに、記憶材料の間に意味上の関連を持たせることで
1チャンク当たりの情報量を増やせば、記憶容量はさらに増える。
そのかたまりがリズミカルであれば、さらに覚えやすくなる。
短歌など詩の韻律も、知らず知らずのうちに
マジックナンバーとチャンクが使われている。
例えば、歴史の年号を覚えるために、
「いい国つくろう鎌倉幕府、1192年」
などの語呂合わせもこの法則を応用している。
マジカルナンバー7は、シンプルだが記憶向上に役立つ法則である。
ぜひ学習に活かして、この法則の効果を実感してみてほしい。