成長したい…
変わりたい…
そう思っても、なかなか思うように自分が変わることができない。
どうして、アイツは成長しないんだ…
ホントに部長はいつまでもたっても変わらない…
と他人に憤慨することもあるのではないだろうか。
大人になっても意識が幼い人や、
年齢は若いのに、妙に大人びている人がいるのは、
成人後の「意識の成長度」の違いが原因なのである。
成人発達理論のロバート・キーガン教授は、
この成人の「意識レベル」の成長度を4つの段階に分類している。
1.利己的・道具主義的段階2.他社依存・慣習的段階
2.他社依存・慣習的段階
3.自己主導・自己著述段階
4.自己変容・相互発達段階
1.利己的・道具主義的段階
自分の欲求や感情に忠実で、他人を自分の道具のように扱う段階。
自分が関心のある仕事だけに興味を示し、それ以外の仕事には見向きもしない、
というような人はこの段階にある。
また、自分の欲求や関心を満たすためなら、
まるで他人を道具のように自分の都合で振り回すのもこの段階の特徴。
自分以外の目線で物事を見られないために、
周囲が自分をどう見ているのか、
あるいは自分が振り回した相手がどんな気持ちになるのか、
を理解できない。
自分がその段階なら、
「この仕事を〇〇さんはどんな意図で自分に与えたんだろう」と自問自答してみる。
他人がそうなら、
同じ質問をその人に投げかけて、自分で考えてもらう。
これを繰り返すことで、
第2段階に必須の「相手の立場に立って考える」能力を養うことができる。
2.他社依存・慣習的段階
相手の立場に立って思考できるが、自分の意見や価値観が未完成の段階。
欲求や関心などの低次元の「自分」ではなく、
価値観や意見などの高次元の「自分」を確立できていないということである。
そのため、他人の意見がなければ行動ができなかったり、
自分の頭で考えずに慣習に従って行動してしまうのである。
めまぐるしくビジネスシーンが変わる現在では、
「指示待ち人間」は、組織にとってお荷物でしかない。
第3段階に進むためには高次元の「自分」を確立するためのトレーニングが必要。
自分がこの段階にあるのであれば、
現在の組織のあり方や仕事のやり方について思っていることを、
ノートに書き出したり、同僚などに相談してみることから始めるのがよい。
他人の場合は、
「〇〇さんはどう思う?」
「この部分は〇〇さんの裁量に任せるよ」
など、自分の意見や仕事のやり方を考えるきっかけをつくるのが効果的。
3.自己主導・自己著述段階
自分の意見や価値観が確立され、他人の価値観の存在も認められる段階。
この段階の問題は「自分ルール」ができあがっているので、
「自分が正しい」という思い込みが強くなり、他人の意見を受け入れられなくなる。
また成功体験に縛られて、新しいやり方を試す勇気を持てない。
この段階の人は「仕事の棚卸」をする必要がある。
今まで取り組んできた仕事を総ざらいすれば、
自分以外の人が自分を支えてきてくれたことに気づいたり、
自分のやり方の欠点に気付くことができるはず。
「自分が正しい」という思い込みが間違っていることを実感できれば、
自分ルールにも柔軟性が生まれる。
他人に対して行うのは難しく時間もかかるが、
うまく次の段階に導ければ、自分にも相手にも大きな成長がもたらされる。
4.自己変容・相互発達段階
必要に応じて自分の価値観ややり方を柔軟に変えられ、他人の成長を結び付けられる。
この段階になると、
自分ルールを絶えず更新し、常に新しい価値観や仕事のやり方を実践するようになる。
この段階の人は「自分」というものを確固たるものとして持っているのではなく、
時間や環境によって変化するものであると捉えている。
また他人を自分の成長にとって必要不可欠な存在だと考えているので、
他人の成長に対しても積極的に取り組むことができる。
ビジネスパーソンの考え方や行動の差は「天性の人柄」や「才能」ではない。
単に成人としての発達段階が違うだけである。
成人発達理論を理解し、
メンバーや上司と相手の成長を促すようなコミュニケーションをとることができれば、
抜本的な組織改革を実現することができるはずである。