集団で作業するとつい手抜きをしてしまう人間心理は、
「リンゲルマン効果」として知られている。
フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンが、
綱引きでの牽引力を測定する実験を行った。
その結果、1人だけで綱を引いた時の力を100%とすると、
2人で引っ張ると1人当たり93%、
5人では70%、
8人では49%、
に低下した。
すなわち、集団で作業を行う場合、
メンバーの人数が増えるほど1人あたりの貢献度が低下する、
という現象が確認されたのである。
2015年、NHKのEテレでリンゲルマン効果についての実験が行われた。
ボディービルダー5名が「停車したトラックを縄で引っ張る」というもの。
1人ずつ引いた場合、平均106kgの牽引力を発揮…
3人で一緒に引いた場合、平均100kgの牽引力になり93%に低下…
5人で一緒に引いた場合、平均97kgまで牽引力が下がった…
綱引きのプロである綱引き連盟の人たちが同様の実験をしたらどうなったか?
結果、人数が増えても1人あたりの力は全く低下しなかった。
綱引きのプロは、その道を極めるために努力を重ね、
高いプライドとモチベーションを持つ集団だといえる。
すなわち、
課題に対してプロ意識をもって取り組む人たちは手抜きをしない、
ということを示唆している。
さらに、最初のボディビルダーチームに対して、
応援してくれるチアリーダーを投入すると、どうなったか?
チアリーダー投入後、5人でも1人の時と同等の力を発揮できた。
では、集団の中で社会的手抜きを防ぐためにはどうすればよいのだろうか。
1.魅力を感じる課題にチャレンジする
綱引きのプロが集団でも手を抜かないことから考えると、
自分が魅力的に感じて打ち込めることにはリンゲルマン効果が起こりにくい、
といえる。
2.応援してくれる人が存在する
自分や相手が手を抜かないためには、
実験で効果が高かった「応援」を有効的に使うのがよい。
応援は、行動するためのモチベーションを高める効果がある。
3.自分のがんばりが評価される
どんな人にも必ず「承認欲求」というものがある。
ほめられたり、認められるとことは人間にとって気持ちのいいことである。
4.個人の成果を「見える化」する
集団に入ると、自分の役割や成果が見えづらくなってしまう。
がんばってもサボっていても結果は一緒ということになってしまう。
これを防ぐためには、個人の成果を周りに見えるようにする必要がある。
5.少数精鋭にする
大きな組織になりすぎるときには、
少人数グループに分けて個人の責任と成果をよく見えるようにすることで、
サボる人を減らすことができる。
人は集団になると手を抜いてしまう。
社会的手抜き(リンゲルマン効果)と呼ばれる心理現象は、
集団で何かをしようとするときに、必ずついて回る問題である。