仲間で居酒屋に行ってドリンクを注文するとき、
本当は、ハイボールが飲みたかったのに、
「とりあえず生ビールの人」と聞かれてほとんどの人が手をあげたので、
ついつい一緒に手を挙げてしまった…
多数決で、自分の考えと違う意見が大多数だっとき、
自分の意志とは裏腹に何も言わずにその場をやり過ごしてしまった…
こんなことはないだろうか。
これはドイツの政治学者ノエル・ノイマンが提唱した「沈黙の螺旋」である。
人は周囲の意見を聞いて観察し、
自分が孤立していると感じると本能的に恐怖を感じる。
そのため孤立を回避しようとする傾向がある。
議論の流れが自分の意見と違う方向に流れると、
反論を出して孤立するより、沈黙という行動をとりがちである。
周りの人との関係を重視する人ほどその傾向が強い。
その結果、沈黙が螺旋状に蔓延していく。
当初優勢だった意見が、
実際の意見の数以上に加速度的に増幅されて、
その会議における合意になってしまうことがある。
これは、ノエル・ノイマンが提唱した仮説「沈黙のらせん」である。
実際の意見の分布はそれほど変わらないにもかかわらず、
最終的な結論が大きくぶれてしまうということである。
少数意見が多数意見に押されて意見を言いにくくなり、
そのためさらに少数意見が軽視されていくことになる。
ノイマンは、沈黙の螺旋を打開する方法は、
少数意見の中に「悪魔の代弁者」を置くことだと述べている。
悪魔の代弁者とは、多数派にあえて反対する者で、
何者にも左右されない自由な意思や発想で発言する人、
あるいは、あえて反対論を役として演じる人である。
会議などでは、
ファシリテーターが参加者に万遍なく発言を求める、
など、沈黙の同調圧力の軽減を意識することが有効である。