三菱自動車や東芝といった日本の名門製造業に不祥事が相次いでいる。
その中で、マニュアルを無視した怠慢も目立つ。
なぜ、マニュアルがあるのに、機能しなかったのだろうか。
マニュアルを最初に作った人は、
自分たちの経験上「これは絶対に必要だ」とわかっていた。
だから、やらなければならないことを文書にした。
また、日本には「技術」を次世代にきちんと伝承していく伝統があった。
ところが、この伝統がどこかで絶えてしまうと、
次世代の技術者たちは、マニュアルがあっても、
「なぜそれが必要か」がわからない。
マニュアルを作成したときの原点まで、考えがおよばないのだ。
かつては、組織全体に中間層の厚みがあり、
その中で、暗黙知を含む知の共有ができる仕組みがあった。
今は、その中間層が「歯抜け」になっている。
さらに、若手社員が現場の情報に接する機会が減り、
経験やノウハウが伝わりにくくなっている。
うるさい「おせっかいなおやじ」のような存在が、
ほとんど、いなくなったこともあるだろう。
きちんとやれと社会の規範を教え込む人がいないと、基本が守られなくなる。
技術の伝承を絶やさない活動がますます大切になってきている。