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思考環境を確保する

ビジネスパーソンとして成功できるかどうかは、
仕事にどれだけの時間をかけたかによる。

日本では、時短が進み、残業そのものを罪悪視する風潮がある。

でも、日本人は、もはや世界一勤勉な国民ではない。
祝日の多さは世界一のレベルである。

残業をやめれば、会社の効率が上がり、
社員の精神的な豊かさが増えると言われ続けている。

本当にそうだろうか。

労務時間を短<すれば、
ストレスがなくなり、精神的な「ゆとり」が生まれる、
といわれる。

でも、ストレスの原因の多くは職場の人間関係や過剰なノルマである。
労働時間を短くするだけで、解決する問題ではない。

「ノー残業」論は、日々の仕事が一定であるような前提である。
でも実際には、仕事は一定ではなく、会社が発展するためには、
新しい「イレギュラーな仕事」が欠かせない。

残業ゼロの職場では、日常業務で手一杯であり、
イレギュラーな仕事がしにくい。
逆に、「ノー残業」で、仕事の積み残しが増え、それがストレスになる。

さらに、「ノー残業」には、
競争相手の企業が存在することが想定されていない。

ビジネスの世界は、常に厳しい競争にさらされている。
皆さんが考えるような仕事の効率化は、ライバルも当然やっている。
その上で、皆さんが今夜やらない仕事を、ライバルはやっているのである。

そうした競争原理を常に想定する必要がある。

皆さんが、ビジネス社会で人材競争を勝ち抜くには、
自分自身をスキルアップさせる質の高い残業が欠かせない。

リーダーは、考えるプロセスがとても重要である。
考える時間を短縮すると、仕事の質が低下する。

効率化しようというスローガンだけでは、役に立たない。
考える時間は効率化できないのである。
十分熟考した企画は、時間を短縮した企画書より、必ずいいものになる。

考える時間を省略して、「残業ゼロ」を目標にするのは間違いである。

部下が帰宅後、朝残業をしてでも、しっかり思考環境を確保すること。
それが、自分自身の将来のスキルアップにつながる。

責任者プロフィール
竹村孝宏

中小企業診断士、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー。大阪市立大学商学部卒業、豪州ボンド大学大学院経営学修士課程(MBA)修了。
㈱デンソーで企画、営業、人事、中国上海駐在を経験、「低コストプロジェクト」で社長賞を受賞するなど活躍した後、独立。現場での多くの経験をベースにした実践的コミュニケーション、モチベーションアップを軸としたプログラムを提供している。日経クロステックに連載中。著書は、「仕事が速い人は何をしているのか?ビジネスフレームワーク活用法」(セルバ出版)
「30代リーダーのための聞く技術・伝える技術」(中経出版)等、多数。

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