中国春秋時代の孫武という将軍が書いた兵法書「孫子」には、次の言葉がある。
「善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為し、以て敵の勝つ可きを待つ」
不敗の態勢をつくれるかどうかは自分次第になるが、
勝利できるかどうかは敵次第となる、
まず負けない態勢を整えたうえで、必勝の好機を待つ、
という意味である。
名将と言われる人は、
まず、攻撃されても絶対に負けないように自軍を固める。
そのうえで、敵軍が態勢を崩して、
いま攻撃すれば絶対勝てる、という状況になるのを待った。
攻撃されても負けないようにする状況をつくるのは、自軍が防御を固めること。
これは自軍の仕事である。
いま攻撃すれば勝てる状況になるのは、敵自身が防御を手薄にするということ。
敵軍の事情である。
負けないというのは自分自身の問題であり、
勝つということは敵自身の問題なのである。
だからどんな名将であっても、
絶対負けない戦いをすることはできるが、
必ず勝つ戦いをすることはできないのである。
企業経営においても、同じである。
新規事業拡大や新商品、新規顧客開拓など攻めの局面では、
ヒト、モノ、カネなどの経営資源が必要となる。
とにかく、攻め、攻めという積極策よりも、
守りを固め、兵力を蓄えて、来るべき攻めに備えることが大切だ。
負ける理由は、社内にある。
外部要因は、きっかけにはなるが、負けの原因にはならない。
自社のことは自分で手が打てるが、
外部の環境や敵のことは、自分の思うようには動かせない。
自力で何ともできないことを、問題の原因だと考えてはならない。
まずは、負けない準備、負けない備えを優先させる必要がある。