問題に直面したときの取り組み方には、
「ギャップアプローチ」と「ポジティブアプローチ」という手法がある。
ギャップアプローチとは、
あらかじめ設定された基準と現状を比較し、
足りない部分を問題としてとらえ、修正や改善を図る、
という方法である。
目的が明確であり、外部環境の情報がはっきりしている場合は効果的である。
例えば、機械が壊れたとき、
どの部品が壊れているかを特定し、交換して修復するような場合である。
事前に、問題がある程度予測できるようなケースである。
ポジティブアプローチは、
理想やあるべき姿を実現するために、
組織やメンバーの価値、強みを高めて、組織パフォーマンスを上げる、
という手法である。
組織やメンバーを、「成長の可能性を秘めた存在」ととらえる。
そして、価値、強み、可能性に焦点をあて、
組織内部で繰り返し対話を重ねることで、
組織のパフォーマンスを高める理想的な姿を明らかにし、
それを実現するための新しい取り組みをはじめる。
ギャップアプローチは、環境変化が大きくない場合には有効に機能する。
外部環境が安定していれば、問題の特定化も容易で、
問題解決方法も明らかにしやすい。
しかし、環境変化が激しく、多様性や複雑性が増してきている状況下では、
問題の特定化も簡単ではないし、ゴールも明確でないことが多い。
まだ足りない…
もっと努力しろ…
と叱咤激励に陥りがちである。
そのような場合には、「~が足りない」という否定から入るのではなく、
「いま持っているものを肯定して伸ばす」
ことで、解決の糸口を探るポジティブアプローチが重要になってくる。
子供のころを思い出してみてほしい。
先生や親に、苦手な科目を、
「とにかく平均点までがんばりなさい」
と言われ、いやいや勉強させられる。
これがギャップアプローチ。
得意科目をもっと伸ばすのに時間を使うのが、ポジティブ・アプローチである。
得意科目だから、勉強するのが楽しい、
そして成績も伸びて、周囲からもほめられる、
だから勉強が楽しくなり、他の科目もがんばるようになる。
その結果、総合点も上がる、
という好循環になる。
メンバーが生き生きと働ける職場づくりを目指す場合は、
ポジティブ・アプローチが有効である。
メンバー全員が参加してありたい姿を描くことで、当事者意識を持ち、
それが主体的、自律的に取り組みにつながっていくのである。