多くの企業では、環境変化に適応するために、
新たな方針や戦略を策定して推進しようとする。
しかし、そうした新方針や新戦略が、
必ずしもうまく社内に浸透しない場合も多い。
ハーバードビジネススクールのJ・P・コッターは、
数々の企業の変革推進プロセスの研究から、
推進プロセスに潜む「落とし穴」を発見した。
そして、その落とし穴を克服して、
組織変革するために必要な8段階のプロセスを提唱した。
コッターが見つけた変革の「落とし穴」とは以下である。
1.変革の必要性の理解形成が不十分
2.キーパーソンの支援とりつけ不足
3.ビジョンの重要性の過小評価
4.コミュニケーションの不足
5.障害の放置
6.短期的な成果を上げる計画を怠る
7.早すぎる勝利宣言
8.日常行動に定着させる努力を怠る
コッターは、この落とし穴を逃れて改革を実現するためには、
以下の8つのプロセスが重要であると主張している。
1.危機意識を高める
市場と競合の状況を分析し、
自社にとっての危機や成長機会を見つけて検討する。
変革に携わる関係者の間で「危機意識」を生み出すようにする。
2.革推進チームをつくる
変革をリードできる適性と権限を備えた適切な人材を集める。
メンバーが互いに信頼して各自の責任を遂行することを助け合い、
結束して行動してシナジーを生むようにする
3.ビジョンと戦略をつくる
変革を主導するような心躍るビジョンを策定する。
関係者から実現が期待されており、実現可能なビジョンを
はっきりした形で示さなければならない。
4.変革のためのビジョンを周知徹底する
変革によって何を目指すのかを、
シンプルで心に響くメッセージで伝える。
あらゆる手段を活用して継続的にコミュニケートする。
5.従業員の自発的な行動を促す
ビジョンや戦略に賛同する人たちの障害になるものを取り除く。
障害となる組織構造やシステムを変革することで、
今までできなかったアイデア、行動の促進が可能となる。
6.短期的な成果を実現する
短期間で成果が見える計画を立案し、
明確な成果、心に訴える成果を生み出して変革に弾みをつける。
短期間での成果に貢献した人々を認知して報いを与える。
7.さらなる変革を進める
ビジョンが実現するまで、変革の波を次々と起こす。
変革ビジョンになじまないシステム、構造、制度を変革し、
変革推進に必要な人材の採用・配置、能力開発を進める。
8.変革を定着させる
変革ビジョンに基づく新しい方法と企業の成功の関係を明示する。
各階層のリーダーが変革を根づかせ、
後継者の育成を進めていくことで、企業文化として定着させる。
企業変革には常に抵抗と反発が伴うことが多い。
最初の計画策定と社内コミュニケーションに、
十分な時間と労力をかけることが、結局は一番の近道である。